府中市美術館で開催されている「石子順造的世界」展を観に行った。
正確にいうと、石子さんについて語る中沢新一氏と椹木野衣氏の対談を聞きに行った。
最近よく著作を読んでいる二人なので、「生」椹木と「生」中沢のトークを大変楽しみにしていた。
石子順造は、いわゆる「普通」の美術批評から漏れてしまうような「漫画」や「キッチュ
(たとえば、銭湯のペンキ絵やマッチ箱のデザインなどなど)」という題材を論じた人物であり、歴々の美術批評家の中で異質なポジションにいる。
石子のフォーカスは、我々の生活とは遠い所にある欧米の頭脳ゲームのような「芸術」ではなく、我々の実際の生活と密接にある色や形の現象としての「漫画」や「キッチュ」に向いている。「漫画」や「キッチュ」は俗物のイメージが強いが故に「異質」となってしまう宿命があるが、石子の批評活動は、実は非常に本質的な行為であったことに、我々は「今となって」気づかされるのである。
脱いでも脱いでも、我々の身体にまとわりつくような「しつこい」西洋美術・デザイン・思想・経済の価値観を、日々はぎ落とす努力をしている椹木氏、中沢氏。お二人の現在進行形の熱いしゃべりは、非常に刺激的であった。(小さな会場が満員で、立ち見で2時間はつらかったけど。)
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