すべての爆弾が花火になれば〜映画「この空の花」〜

大林宣彦監督の映画「この空の花」を観た。

なんとも「すごい」映画でした。

ネット上でこの作品への評価が高まっていて、この度、それにつられて観に行ったのです。

 

大林監督の講演を、数年前に聴いたことがある。氏は筋金入りの平和希求者(←言葉が相応しくなければ、すみません)であり、講演では「スターウォーズは『戦争』映画です。」と、当たり前かつ本質的、な言葉を語っていた。私はその言葉によって「戦争反対のくせにスターウォーズ好き」という自分の矛盾に気づかされたのだった。氏の仏のような柔らかい物腰と、ぶっ通しで2時間立ちっ放しで語り続ける情熱に、大いに心打たれたのである。

 

今回の映画は、そんな大林監督の戦争廃絶、平和希求への思いと、「大林マジック」と言われる映像手法の熟練の極みを感じさせるものだ。東日本大震災を経て、監督の思いはとどまることを知らぬ滝のように流れ、渦を巻き、猛烈な運動を起こしている。
戦争、原発、主体、客体、役者、観客、過去、現在、実写、アニメ、ハイテク、ローテク、フィクション、ノンフィクション、爆弾、花火‥。いくつもの、いくつもの要素が目まぐるしく重なり、シェイクされ、我々を巻き込んでゆく。実際スクリーンの中の役者は、カメラ目線でこちらに話しかけてきたりする。スクリーンと観客席、そしてスクリーン内の現実と劇中劇、いくつものレイヤーが錯綜し、圧巻のクライマックスへと突入してゆく。濃密な160分。

 

挑戦的な(故に、正直、たまに鼻につくこともあった)「大林マジック」的映像手法。それが筋金入りの平和希求と相まって、ものすごい高みに上り詰めている。映画という表現の可能性と力を気づかせてくれます。

 

大林宣彦監督、御年74歳。

ものづくりを蓄積し、ついに到達する渾身の表現。そしてまだまだ進化する姿。

憧れと敬意を感じます。

 

 

※ 映画「この空の花」~東京では、渋谷アップリンクで で上映中。